現場とだけ密に連携するPMO

「業務部長には確認したんですよね?」

「え?なぜ確認しないといけないんですか!」

情シスPMOのAさんに確認すると、感情的に反論してきました。

業務改革プロジェクトで、ある業務機能を本社に集約するかどうかの議論がありました。

現場の意見は「本社に集約できない」でした。その理由を情シスAさんは、口調を強めて説明されます。

現場の意見を細かく丁寧に吸い上げている点は、素直に感心しました。

一方で、「この判断を業務部長が聞いたらどう思うか?」と考えると、激しく不安になりました。

どうやらAさんは、こう考えているようです。

  • 現場と苦労して決めた内容にどうしてケチをつけるのか
  • 現場の大変さを知らないだけだ
  • 現場を知らない業務部長は判断できない

情シスPMOはどこまで確認をとって、進めるべきでしょうか?

トップは何を求めているのか

情シスメンバーは、現場担当者とは積極的に調整します。電話、メール、個別会議など、とても密にコミュニケーションします。

これは、どこの現場でも見られる光景です。

ところが、業務部門のトップまたは経営層とのコミュニケーションとなると、別人のように鳴りを潜めます。

通常業務であれば、立場をわきまえて、しかるべき報告ルートで報告するべきでしょう。

しかし、「全社横断プロジェクト」や「業務改革プロジェクト」においては、経営層や業務トップは何を求めているのでしょうか?

現場から上がってくる「主観的な意見」とは異なる、「客観的な意見」や「フィルターのかかっていない事実」を求めています。

その上で、より多くの情報を踏まえて、トップとして判断したいのです。

  • 全社的な判断や大きな決定事項
  • トップと現場でギャップが感じられる事項
  • インパクトの大きい想定外の事項

多くの情シスを支援してきましたが、トップに報告しに行って、嫌がられたことはほとんどありません。むしろ忙しい中でも時間を割いて、話を聞いてもらえます。

トップに軽視されるPMOは、同じクラスの話しやすい人とだけ仕事をします。ヒリつくような場でトップへ説明することを避けるようでは、小さな事務局はできても、大きな改革をリードすることはできません。

情シス/IT部門は客観性が武器となる

冒頭の件、嫌がるAさんを説得し、業務部長に報告しに行きました。

部長は、Aさんの説明を前のめりで聞き、真剣に考えています。現場の判断に理解を示しながらも、「部長預かり」になりました。その後、別の場で議論が行われ、「本社に段階的に集約する」という異なる結論で進むことになりました。

あのまま現場だけで進めていたら、後でとても大きな問題になっていたでしょう。想像するだけでも恐ろしくなります。

トップと現場のベクトルを合わせることは非常に重要です。それは、客観的な立場の情シス/IT部門だからこそ、行いやすいのです。

報告が終わった後、業務部長に言われました。

「このメンバーで定例会をやろう」

Aさんは嬉しそうでした。

貴社の情報システム部門/IT部門は、トップレベルのマネジメントを意識していますでしょうか?