プレゼンでたくさん質問してみる

「追加費用はどうやれば抑えられますか?」
「後から仕様追加は相談に乗っていただけますか?」
「アジャイルで設計書は作らないんですか?」
「現場の声が強いのですがどうすればいいですか?」
「過去にこういった経験はありますか?」
等々・・・。

あるシステム再構築プロジェクトで、3社にRFPを発行し、各社にプレゼンテーションを実施していただきました。

各社とも提案書の説明は「安定」しています。

おそらく事前にリハーサルを重ねたのでしょう。プロジェクトマネージャーの説明にミスや失言はありません。そして、かなりの棒読みです(笑)。

その後、質問タイムに移り、冒頭の質問をします。

この質問に対するベンダーの反応が、実に様々でした。

ベンダーの反応の仕方で、いろいろなことが見えてきます。

プレゼンの重要な評価ポイントとは

プレゼンで最も確認しなければならないことは何でしょうか?

わざわざ対面でプレゼンをやる意味を考えてみましょう。

提案内容は、提案書を読み込めばだいたい分かります。プレゼンをすることで、値下げしてくれるわけでもありません。不明点があれば、書面で正式に回答をもらう方が確実です。

それでもなお、わざわざプレゼンをやる必要性は何でしょうか?

それは、プロジェクトマネージャーを確認したいから。

「この人ならプロジェクトを任せても大丈夫」

と安心したいからです。

提案書にプロジェクトマネージャーの経歴が書いてありますが、書面ならどうとでも脚色できます。数日しか関わっていないプロジェクトでも、全てを書き出してコメントを盛れば、それなりに見栄えがよくなります。

なので、リアルで会って、確かめたいのです。

では、プレゼンでどうやってプロジェクトマネージャーを確認すればよいのでしょうか?

話し方が上手いか、こちらの話を聞いてくれるか、質問に柔軟な回答ができるか、経歴はマッチしているか、ウチに合いそうか、好きか嫌いか(笑)、など見所はたくさんあると思います。

その見所で、実はとても簡単な方法があります。それは、質問に対して

プロジェクトマネージャーが喋るか、営業が喋るか、

です。プレゼンという社運がかかったシーンでは、ベンダーも慎重になります。

この大事な回答権をプロジェクトマネージャーに委ねられるか?

ここにベンダー社内の信頼度が現れます(バレます)。

ベンダー側が

「まだ会社として自信をもってコイツを推せない」
「下手に喋らせるとボロが出て危険」

と考えると、必ず横から営業が割って入ってきます。

プロジェクトマネージャーに質問をしているのに、違う方角から回答が来ます(苦笑)。

逆に

「コイツに任せれば大丈夫」

と信頼されていれば、プロジェクトマネージャーが堂々と回答します。隣とアイコンタクトすらとらずに、当然のように話し始めます。

つまり、誰が回答するかで、ベンダー社内の信頼関係が分かるのです。

質問が1個や2個であれば我慢できますが、10個ぐらい出せばボロが出てきます。

コツは、テクニカルな質問ではなく、決断・信念・経験・ノウハウ・自信が求められるような質問をすること。

それに対して、迷いもなくプロジェクトマネージャーが応答してくれるか、営業または上司にSOSのサインを出してしまうか、そこを見ます。

仮に営業がパーフェクトな回答をしたところで、契約後は顔を出さなくなるだけなので、意味はありません。ノイズでしかないです。

プレゼンの場で、回答すら任されない人に、プロジェクトのリーダーシップを発揮できるとは到底思えません。

正解のない質問に堂々と答えてくれることで、ユーザー側は安心してプロジェクトを任せられるのです。

そのベンダーの「エース人材」かどうかは営業が教えてくれる

冒頭のプレゼンで3社に対して、10個の同じ質問をしました。

A社は、10個ともプロジェクトマネージャーが回答しました。
B社は、7個、プロジェクトマネージャーが回答しました。
C社は、なんと10個とも営業が回答しました。

C社は、何度もプロジェクトマネージャーに向かって質問しているのに、必ず逆方向から声が聞こえてきます。

左を向いて話をして、右を向いて聞く、というエクササイズを10回繰り返しました(笑)。

C社のプロジェクトマネージャーはよほど自信がないのか、気まずそうな表情でした。営業は言いたいことが言えて満足そうです。

帰り際に営業が「どうぞよろしくお願いします」とドヤ顔で挨拶されたので、こちらも全力の愛想笑いをお返ししました(笑)。

一方のA社は、隣に役員が座っていましたが、ほとんど発言せず、プロジェクトマネージャーの回答を静かに聞いていました。

あまりにも静かだったので、あえてその役員に質問をぶつけてみたところ、勢いよく超的確な回答が返ってきて、びっくりしました。

おそらくこの役員の方は、全ての質問に素晴らしい回答をすると思います。そこをあえてプロジェクトマネージャーに全て任せている、ところに感動しました。

そして、ふと「自分はタイプ的にこのA社の役員ではなくてC社の営業なのではないか」との考えがよぎり、プレゼン中に変な汗をかきました(苦笑)。

貴社のIT部門・情報システム部門は、ベンダープレゼンでどのように質問をしていますでしょうか?