ある進捗会議でのPMOと業務部門のやりとり

(PMO)「業務チームのAさん、進捗を報告してください」
(業務T)「順調です」
(PMO)「あれ?でも資料の作成が終わってないですよね?」
(業務T)「大丈夫です。もう終わるので」
(PMO)「じゃあ、資料が完成したら私にも連携してください」
(業務T)「もういいんじゃないですか?見ても分からないでしょうし、説明する時間もないし、お互い時間の無駄だと思います。もう次の話題にいってください」

情シス/IT部門がプロジェクトでPMOを担う企業が増えてきました。PMOの存在が認知されてきていることは喜ばしいことですが、その実態はどうでしょうか?

情シスがPMOとしての役割が保証されると、無意識のうちに油断が生じます。手を抜くわけではないですが、他のタスクも掛け持ちして、プロジェクトに割く時間が削られていきます。

そこで陥りがちな罠が、「PMOは進捗を管理していればなんとかなる」と考えてしまうことです。しかしそのような考えで、PMOはプロジェクトに貢献できるのでしょうか?

進捗管理の勘違い

PMOが「進捗だけ」を管理していくと、どうなるのでしょうか?

業務部門にとっては、「全く得がない」のです。

業務部門は、本業を抱えながら時間を捻出して、進捗会議に出席しています。出席するだけでも、業務部門には負担です。そこで取調室のように進捗を聞かれ、遅れを追求されると、ウンザリします。

PMOは上司に報告しないといけないため、「遅れ」はしつこく聞いていきます。しかし、説明してもPMOには理解できません。普段から進捗しか管理していないため、業務の説明についていけないのです。そして業務部門は、素人に分かるまで延々と説明をさせられます。

まるで「PMOの保身のために、業務部門が時間を割いている」という構図です。忙しい業務部門は、ますます忙しくなります。

このような状況が続くと、業務部門は正直に遅れを申告しなくなります。遅れを追求されると面倒なので、表面的には順調と答えるようになってしまいます。

徐々に業務部門の対応は以下になっていきます。
・時間をとられないよう、聞かれたことだけを答える
・本当にまずい情報は決して出さない
・個別会議にPMOは呼ばない
・困った時にPMOに相談しない
・業務部門が独自に(裏で)進捗管理や課題管理を行う

もはや、PMOに存在価値はありません。それどころか、進捗管理をやればやるだけ、業務部門の足を引っ張る存在になってしまいます。

そのようなPMOに限って、「業務部門は協力してくれない」「業務部門は情報を出してくれない」と文句を言います。

しかし、業務部門にとってみれば、協力してくれないのはPMOの方です。管理という名の「締め付け」だけで、いなくても困りません。むしろ、いなくなってほしいと考えています。

業務部門にとって必要なのは、自分たちを助けてくれるPMOです。

  • 業務の悩みや苦労を理解してくれる
  • 業務の悩みを客観的に整理してくれる
  • 業務の課題にも踏み込んで、一緒に解決を考えてくれる
  • 課題について、他部門やベンダーと調整してくれる
  • 課題について、上層部に掛け合ってくれる
  • 課題解決のファシリテーションをしてくれる

PMOが、どれだけ業務部門の「課題解決」に貢献できたかが問われます。

本当の進捗管理とは

PMOが「課題管理」を適切に行えるようになると、「進捗管理」も適切に行えるようになります。課題が分かっているからこそ、適切な期限を設定することができるのです。

業務部門もPMOを信頼しているからこそ、正直に「遅れ」を申告するようになります。

PMOが頼りになる存在だと認知されれば、黙っていても自然と情報が集まってきます。経営、業務、企画部門、ベンダーなど全てのプロジェクト関係者が相談しにきます。

そもそも、進捗管理をする上で、その対象となる「タスク」を理解せずに、管理することはできるのでしょうか?表面的に「遅れている」「進んでいる」は分かったとしても、その状況に応じて「対策」を打つことは不可能です。そのようなPMOが、プロジェクトに何を貢献できるというのでしょうか?

貴社の情シスPMOは、業務部門の足を引っ張る「進捗だけ管理型」ですか?
それとも、業務をしっかり支える「課題解決型」でしょうか?