お飾りな情シス/IT部門の進行役

「ウチのメンバーはうまく会議を仕切れないんですよ…」
ある情シス部長から相談を受けました。

そこで田村は、そのプロジェクトの定例会に参加させていただきました。

情シスのAさんが進行役ですが、冒頭でユーザー部門に話を振った後は、ユーザー側だけで議論が盛り上がります。Aさんが作ったアジェンダは存在しましたが、「日時・場所・出席者」が書かれているだけで、中身はほぼ空白でした。

気付けば予定を1時間もオーバーし、終了します。

結局、Aさんが発言したのは、最初と最後の「形式的な挨拶」だけでした。

ユーザーから信頼される進行役となるために

会議をうまく仕切る人とは、どんな人でしょうか?

テレビの司会者やMCのイメージで考えてみます。

  • うまく話しをまとめる(オチをつける)
  • テンポよく参加者に話を振る
  • 適度に話に介入する

どれも望ましいスキルですが、プロジェクトシーンで最も求められるスキルは少し異なります。

「会議をゴールに導く人」です。

極論すると、目立たなくてもOKです。その人が進行することで、会議が終わったあとに「課題が解決した」「やるべきことが決まった」など、会議の目的が達成された『状態』になっていることです。

そのためには、「アジェンダ」(会議進行表)が重要となってきます。

アジェンダの質によって、会議の質が大きく変わるからです。

<アジェンダ作成手順>
① 会議のゴール設定
② 会議の準備
③ ストーリーの設定

①の「ゴール設定」が重要なのは言うまでもないですが、情シスにとって最も難しいのは②の「準備」です。ここにどれだけ注力できるかで、③の「ストーリー」の実行力が決まります。

この準備とは、「議論する領域の理解」「関係者の根回し」「資料作成(資料作成依頼)」などです。

準備をするにあたり、「議論する領域の理解」が避けて通れません。ユーザーと同じレベルまでは必要ありませんが、論点の把握は必要です。

なぜなら、呼び水となる質問を投げたり、各自の発言を整理したり、分かりやすい言葉に置き換えてみたり、適切なタイミングで介入できなくなるからです。

また、理解が不足していると、関係者との根回しもできません。事前に根回ししておかないと、会議で「一発決定」は厳しくなってしまいます。

そして、会議をイメージ通りに進行させるためには「適切な資料」が不可欠です。空中戦を防ぎ、効率的に共通イメージを持たせ、論点に集中させることができます。

そのためには、事前の準備に多くの時間を費やすことになります。資料を読み込み、論点を整理し、具体的な進行イメージを作っておきます。

会議の仕切り、いわゆる「ファシリテーション」を苦手としている方は、「どううまく切り返すか」という会議場面での「反射神経」スキルに意識が向いてしまいます。そういう人に限って、その前の「準備」が抜け落ちていることに気が付いていないのです。

準備をせずにファシリテーションを行うことは無謀です。ユーザーと対峙する情シスが準備を怠り、業務も分からず、論点も把握せずに、どうやってその会議を仕切ればよいのでしょうか。

逆に準備をしっかり行っておくと、自然とユーザー側から進行を委ねられます。
「Aさん、この件はいったん保留にしませんか?」
「Aさん、この宿題は私がいったん引き受けます」
「Aさん、後で相談させてください」

つまり本当の進行役とは、上から押し付けられた役割ではなく、ユーザーの信頼を得た人が自然とその座に納まる、ということです。

情シス/IT部門の存在価値を高める

情シスが会議をうまく仕切ることができるようになると、存在価値は一気に高まります。

なぜなら、プロジェクトとは「会議だらけ」だからです。

そのプロジェクトにしっかりと軸を通す存在であり、関係部署には頼もしい限りです。

そのため、情シスがPMOを名乗るなら、何が何でも進行役は担うべきです。ここで楽をして、ユーザーに任せてはいけません。ユーザーに仕切られると、情シスは武器を持たずに戦場にいるようなものです。

そして、情シスが進行役を担ったら、アジェンダをきちんと設計するべきです。

貴社の情シスは、会議をうまく仕切っていますでしょうか?
そのアジェンダは、具体的な進行イメージがありますでしょうか?