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COLUMN | コラム詳細

公開日 : 2018年12月26日
テーマ : 情シスコンサルタントの提言
第18話:情シス/IT部門のPMOが気を遣いすぎるとどうなるか?

●気を遣いすぎる人と空気を読まない人
情シスPMOのPさんは、毎週火曜日の定例会で進捗を確認します。
 
「まだ終わっていません」
「私も終わっていません」
「着手すらできていません」
 
ほとんどの業務メンバーが、予定より大幅に遅れています。
 
「忙しくて仕方ないですよね、承知しました」
 
Pさんは、特に掘り下げるわけでもなく、苦笑いしながら記録するだけです。毎週、「遅れ」を確認するだけの会議が続きました。
 
遅れを立て直すため、追加で情シスのZさんがアサインされました。Zさんは、Pさんの部下です。職位も業務知識も、Pさんを大きく下回ります。
 
しかし、Zさんは「空気を読まず」業務メンバーの遅延に対して、どんどん「ツッコミ」を入れていきました。業務メンバーは感情的になり、会議中はとても険悪な雰囲気になります。それでも、Zさんは怯みません。遅れに対して「Next Action」と「期限」をしつこく設定していきました。
 
業務メンバーからPさんに「Zさんをどうにかしろ」とクレームも入り始めます。
 
このプロジェクトは、その後どうなったのでしょうか?
 
 
●気を遣いすぎると信頼を得られない
PMOは、泥臭い調整が多いため「気遣い」や「配慮」は絶対的に必要です。ここが欠落すると、業務メンバーの協力は得られなくなってしまいます。
 
一方で、「気遣い」や「配慮」の度が過ぎると、逆効果になります。
 
Pさんは、業務メンバーに対して気を遣いすぎていました。
 
下手に出ることが当たり前となり、「秘書」や「付き人」のような存在になっていました。その結果、業務メンバーになめられていたのです。
 
Pさんは、「遅れています」に対して、そのまま流していました。その対応が、プロジェクト内で「遅れていいんだ」という緩い空気を生み出します。遅れが出ても平然とし、「自分がいかに忙しいかアピールすれば許される」と、プロジェクトがまるで他人事のように扱われました。
 
会議で不毛な時間が多くなり「忙しいので次の定例会はスキップしよう」と言われてしまいます。
 
悲しいことに、Pさんは気を遣えば遣うほど、軽視され、悪循環に陥りました。本人は必死に改善しようとしますが、本人はその構図に気づけません。
 
一方で、Zさんは遅れに対して、毅然とした態度をとりました。しつこく食い下がり「遅れると面倒だ」という意識が業務メンバーに植え付けられます。一時的に不穏な空気が流れましたが、一貫した態度に業務メンバーが根負けしました。
 
次第に業務メンバーの行動も変わっていきます。自身の進捗の良さをアピールするようになります。プロジェクト外の割り込みが入っても、断るようになりました。プロジェクトタスクを、他のメンバーにも割り振るようになります。
 
業務メンバーが忙しいのは事実です。だからこそ、Zさんのようにきちんとプロジェクトを引っ張ってくれるPMOはありがたいのです。業務メンバーもタスクを実行するうちに「これは自分たちの仕事だ」という当事者意識が強くなっていきます。
 
PMOが「外圧」になることで、プロジェクトに良い緊張感を生み出すのです。
 
 
●「気遣い」+「勇気」=「外圧」
冒頭のプロジェクトは数ヵ月後、質問や相談は全てZさんに集中していきます。Zさんが起点となり、進捗は改善され、活気も取り戻しました。
 
「Zさんにたくさんお尻を叩かれてしまいました」
「でも、我々は本当に時間がないので、引っ張ってくれて助かりました」
 
業務メンバーの方が笑顔でコメントされたのが、とても印象的に残っています。
 
一方のPさんは・・・存在感が薄くなり、他の仕事にシフトしていきました。
 
業務部門に最も気を遣っていた人が、業務部門から信頼を得られなかったというのは皮肉です。しかし、情シスにはこのような「良い人すぎる」方が多いと感じます。情シスに求められているのは、空気を読まない「勇気」ではないでしょうか。
 
貴社の情シスPMOは、適切な「外圧」になっていますでしょうか?
 
 
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情シスコンサルタント 田村昇平
IT部門の育成・強化を専門とするコンサルタント。ITプロジェクトの企画から導入・保守までの全工程に精通し、そのノウハウを著書「システム発注から導入までを成功させる90の鉄則」(技術評論社)で公開している。

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