多忙なユーザーの反応はいつも同じ

「こっちは暇じゃないんですよ!」
「今月の処理を失敗したら責任とってくれるんですか?」
「私にこれ以上残業させるつもりですか?」
「考える時間も打ち合わせの時間も全くとれません!」
「そっちで勝手にやればいいじゃないですか!」

業務部門のMさんにクレームを言われたのは、2~3回ではありません。話しかけると、いつも否定的な言葉を浴びせられます。

PMOとして支援していた田村は、Mさんの顔を見ただけで胃が痛むようになりました。

Mさんは、業務部門のリーダーで、毎月「締め処理」に追われています。エクセルの集計、システムへの転記、全国の営業所からの問い合わせ対応など、毎日フル回転しています。いつも終電で、繁忙期には休日出勤も当たり前です。

そのような状況だからこそ、プロジェクトを立ち上げ、改革を進めようとするのですが、そのユーザーが「ボトルネック」となることは珍しくありません。

基幹システムの再構築では特にそうですが、このような多忙なユーザーを相手に情シスPMOはどう進めていけばよいのでしょうか?

根本的なユーザー貢献の意味

業務メンバーは、本業を抱えています。月初は「締め処理」で大忙しです。普段は温厚な人でも「話しかけるなオーラ」を全身から発しています。

しかし、PMOの立場からすると、プロジェクトを止めるわけにはいきません。そもそもスケジュールに余裕がないのに、ユーザーの不参加は遅延が大きくなるだけです。

このように定期的に「繁忙期」が訪れるユーザーに対して、どう進めていけばよいのでしょうか?

それは、「業務のピーク」と「プロジェクトのピーク」をずらすことです。

例えば、月初1~7営業日までユーザーの繁忙期とします。それをWBS上に最初に書いてしまいます。その上で、繁忙期を避けて8営業日からユーザータスクを詰め込みます。そのWBSを見せて、こう説明します。

「この予定で進めないとプロジェクトが終わりません」

大抵のユーザーは抵抗しますが、PMOも流されるわけにはいきません。ユーザーの都合だけを聞いてしまうと、プロジェクトはいつまでたっても終わらないからです。

忙しいユーザーをどう動かすか?

これはPMOにとって根幹のスキルです。あらゆる手段を講じていきます。

  • ユーザーに多くのメリットを説明し、動機付けする
  • ユーザーの上司に相談して、圧力をかけてもらう
  • PMOとして誠意を尽くし、ユーザーの心に訴える
  • ユーザーに丸投げせず、回答のおぜん立てをする
  • クレームにめげずに、何度もアプローチする

PMOは、ユーザーの「現在」に配慮はしますが、ユーザーの「未来」に責任があります。短期的にはユーザー負担でも、長期的にはユーザーのためになるなら、信念を持ってプロジェクトを進めるべきです。

「今は恨まれても、後で感謝されればいい」と開き直ることも必要です。

このようにPMOは「メンタルを鍛えるチャンス」を多く得られます。このチャンスをものにしたメンバーが増えると、情シスは強くなっていきます。

終わり良ければすべて良し

冒頭のプロジェクトは完了し、Mさんに挨拶したときのことです。

Mさんは「本当にありがとうございました。おかげさまで・・・」と10秒間沈黙があった後、メガネを外して泣き出しました。それを見た田村も泣いてしまいました。

PMOは、板挟みになりやすいポジションです。時には現場に恨まれることもあるでしょう。でも「終わり良ければすべて良し」です。

PMOは最後に「感謝」という最大の報酬を受け取ります。それが全てです。苦しんだ分、達成感も大きく、自身の成長も実感できます。

この「感謝」が次のプロジェクトのエネルギーとなります。情シスの立場も向上し、全社的な好循環に入っていきます。

貴社の情シスPMOは、忙しいユーザーとどのように接していますでしょうか?